優しく、激しく

世界を光と匂いと音と直感で感じる人だと思う。
だから触って、噛んで、嗅いで、確かめる。
好きなものとそうではないもの。
例えば道に転がったガラス玉、使い古された手袋、ピアノの音、可愛いヘアピン、
薄い氷の上を歩く緊張感、焼きたてのパンの匂い、友達と遊ぶ事、追い詰める楽しさ、
窓を開けたときに入ってくる風の冷たさ、溢れる血液、土を踏む音、
ドアノブの触わり心地、美しいものを汚す感覚、鋭い痛み、クロウ。
蝶を捕まえたら虫ピンで刺したくなる。
真っ白な壁があればペンキをぶちまけたくなる。
好きなものと一つになりたい。取り込みたい。食べたい。
ガラス玉も、蝶も、クロウも。
ひどく感覚的で、単純で、なんだか子供みたいだ。
なまじっか能力と才能があるだけにタチが悪い。

したくない努力はしない。出来ない事もしない。
もしビジャックが欲しくなっても、捕まえようとはしないし
その為に何かをすることもない。
クロウが拒んだとしても、自分から追いかけることはしないだろう。
自分の周りに好きなものが沢山ある事は知っているし、
クロウがその中の一つでしかないこともわかっているから。

自分と他人のズレに気付いたのは子供の頃。
普通だと思っていた事を、一番近くにいた兄に否定されて。
でもきっと愕然とはしなかったと思う。
何かが冷めてしまった気がするけど。
自分の性癖を否定しない人には子供みたいに懐いてしまうのは
実親に素で接する事が出来なかったからかもしれない。
だからフォルテはもとより、帰還ビジャックあたりにも懐くんじゃなかろうか。