muon*[本館]
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私はいつだって傍に居よう
お前がそれを望むなら
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土に汚れた色素の薄い髪と白い肌が、布から覗いているのが見えた。
その横には、それよりも一回り小さな物が同じように置かれている。
腰よりもやや低めの台に、二つの白い塊。
それらはどちらも味気も飾り気もない布に覆われていて、その白さは清潔感や気持ちの良さを感じるより前に、いっそ不吉な雰囲気すら漂わせていた。
いや、それは布のせいではなくて、この場所が問題なのかもしれない。寧ろそちらが正しいのだろう。
灯りも薄く狭いこの部屋には、目の前の台以外に 扉の横に小さな棚がひとつあるだけだった。他には何もない。壁の上の方に申し訳程度についた窓からは、暮れかけた太陽の赤い光だけが漏れていた。
何も言わずに 先程からただ立ち尽くしている私を見て、塊の向こう側に立っていたプリーストは少し目を伏せて表情を歪める。
「突然の事で ショックなのはわかります、ですが お気を確かに・・・」
どうやら彼は 私が動揺の余りに動く事が出来ないのだろうと思ったらしい。そう宥めるように言って、静かに私の顔を見た。
私は上手く返す言葉が見つからずに、ただ一つ瞬きをして 小さく彼に頷いた。二つの白い塊に小さく頭を下げ、プリーストの男が塊の上に乗せられた小さな布を静かに 持ち上げる。
布の下から現れたのは、つい先日まで毎日見続けていた顔だった。
少しクセのある淡い栗色の髪に、目の下にある小さなほくろ。見間違えようも無い。
紛れも無く、三年の間 共に過ごし 生きてきた、私の妻だった。
そして彼女の隣に横たわっているのは 今年で三歳になる、なるはずだった 娘。
白い布を持ったまま、プリーストは私の顔をちらりと伺い見る。その目には 強い同情とやるせなさが滲んでいた。
「間違い ありません」
心は不自然な程に落ち着いていた。私がただ 二日前までは間違いなく妻であった彼女の栗色の睫を見つめながらそう答えると、プリーストは再び目を伏せ、残念です とだけ言い、手に持っていた布を台の傍らに置いて、静かに部屋から出て行った。
狭い空間に残された私と妻と娘は、しばらくの間何も言わずに立ち尽くしているだけだった。それも当然の話だ。彼女達はもはや生きてはいないのだから。物言わぬ物へと成り果てた妻に近づき、その髪に触れる。その感触は二日前と何ら違いは無かった。
年に一度の学会報告の為に 家を空けていたのだ。決して初めての事ではなかったし、彼女も今まで通りに笑顔で送り出してくれた。
訃報が届いたのは、初日の発表を無事に終えて 翌日の準備を整えていた時の事だ。確かに、書類ケースに入れてあったまっさらの予備の紙に何故かインクの染みがついていて、不思議に思ってインク瓶の蓋を閉め直していた時だった。やや荒々しく叩かれた扉に どうぞ、と声を掛けると、入ってきたのは宿屋の台帳管理をしていた少年だった。
「速達」
簡潔にそう述べられ、差し出されたのは小さな封筒と 何も乗っていない手の平。
封筒を受け取り、思わずそのしたたかさに苦笑すると、少年は ん、ともう一度手の平を伸ばす。
「ありがとう」
そう言ってその手の平にコインを数枚握らせ、それに満足して 入ってきたときと同じくらい荒々しく部屋を出て行く少年を横目で見ながら 少しの間逡巡する。
速達だって?滞在先を知っているのは 学会関係者数名と、家で待っている妻だけではないか。
学会の事で何か問題が生じたなら、手紙など面倒な手段を取るよりも直接尋ねた方が早いはずだ。と、すると、消去法で送り主は妻であるはずなのだが、これも違う。
封筒の表に書かれた筆跡が妻のものでは ないのだ。
結局しっくりくる予想も付かずに 首を捻りながら、封を切る。中から出てきたのは封筒のサイズに折りたたまれた白い紙。その上に書き殴るように並んだその文字は、確かに予想外の事を私に伝えてきた。
妻と子供が事故に合ったという事、そしてそのどちらも 助からなかったという事。
送り主は偶然その場に居合わせたらしい妻の知人だった。連絡先は、几帳面な妻がリビングのコルクボードに貼り付けていたメモを見たという事が最後の方に言葉少なに書かれていた。
私はしばらくその手紙の内容が理解出来ずに、口元を押さえたまま立ち尽くしていた。
実際は理解をした上で、それらしい反応が出来なかったゆえに、理解出来ていないような気になったのかも知れない。それ程に私は落ち着いていた。
それからすぐに 出した荷物を再び鞄に押し込み、プロンテラに戻ってきた。学会はまだ途中だったが、そんな事はどうでもよかった。戻った家の玄関先で待っていたのは、連絡をくれた知人で、目元を赤くした彼女に連れられるままに聖堂へと向かったのだった。
そして、今へと至る。
娘の額に付いたままになっていた土を手で拭ってやりながら、私は改めて二人を見た。
台の上に静かに横たわる彼女達は、顔に目立った傷が無く、首から下を白い布で覆われているせいか ただ眠っているだけのようにも見える。ひどく現実味がない。
しかし触れた肌は明らかに人間の持つそれよりもずっと冷たく、静かだった。
牛や豚が死ぬとただの肉へと成り下がるのと同様に、彼女達もまた、人の形をした別の物体へと変質してしまったのだ。それは生きる物全てに必ず訪れる必然であり、真実だ。
終わり方はどうであれ、いずれはこうなる。遅いか 早いかの問題なのだ。
およそ万人に認められる愛しかたではなかったが、私は私なりに彼女達を愛していた。
それを彼女達がどう感じていたか、今となっては私に知る由も無い。
私は妻だった物の、髪を 頬を撫で、冷たくなった手を握り、そしてその唇に小さくキスを落とした。
彼女が 眠る前にはキスをしましょうと、そう私に言っていたからだ。
==================================
クロック先生(クリエイター)の過去。
カリシュが家に来る7年程前、嫁と娘が事故死した時の話。
漫画で描けそうになかったから小説にしてみた。
後半はしょり過ぎたから書き直そうかと思ってたら、飛白にこんなもんでいいんじゃんと言われたのでそのまま上げちゃったんだぜ。後悔はしてないんだぜ(今のところ)
とりあえずクソ眠いから寝てこよう。
そして明日こそリクナビとか学情とかエントリー出すんだぜ。
その横には、それよりも一回り小さな物が同じように置かれている。
腰よりもやや低めの台に、二つの白い塊。
それらはどちらも味気も飾り気もない布に覆われていて、その白さは清潔感や気持ちの良さを感じるより前に、いっそ不吉な雰囲気すら漂わせていた。
いや、それは布のせいではなくて、この場所が問題なのかもしれない。寧ろそちらが正しいのだろう。
灯りも薄く狭いこの部屋には、目の前の台以外に 扉の横に小さな棚がひとつあるだけだった。他には何もない。壁の上の方に申し訳程度についた窓からは、暮れかけた太陽の赤い光だけが漏れていた。
何も言わずに 先程からただ立ち尽くしている私を見て、塊の向こう側に立っていたプリーストは少し目を伏せて表情を歪める。
「突然の事で ショックなのはわかります、ですが お気を確かに・・・」
どうやら彼は 私が動揺の余りに動く事が出来ないのだろうと思ったらしい。そう宥めるように言って、静かに私の顔を見た。
私は上手く返す言葉が見つからずに、ただ一つ瞬きをして 小さく彼に頷いた。二つの白い塊に小さく頭を下げ、プリーストの男が塊の上に乗せられた小さな布を静かに 持ち上げる。
布の下から現れたのは、つい先日まで毎日見続けていた顔だった。
少しクセのある淡い栗色の髪に、目の下にある小さなほくろ。見間違えようも無い。
紛れも無く、三年の間 共に過ごし 生きてきた、私の妻だった。
そして彼女の隣に横たわっているのは 今年で三歳になる、なるはずだった 娘。
白い布を持ったまま、プリーストは私の顔をちらりと伺い見る。その目には 強い同情とやるせなさが滲んでいた。
「間違い ありません」
心は不自然な程に落ち着いていた。私がただ 二日前までは間違いなく妻であった彼女の栗色の睫を見つめながらそう答えると、プリーストは再び目を伏せ、残念です とだけ言い、手に持っていた布を台の傍らに置いて、静かに部屋から出て行った。
狭い空間に残された私と妻と娘は、しばらくの間何も言わずに立ち尽くしているだけだった。それも当然の話だ。彼女達はもはや生きてはいないのだから。物言わぬ物へと成り果てた妻に近づき、その髪に触れる。その感触は二日前と何ら違いは無かった。
年に一度の学会報告の為に 家を空けていたのだ。決して初めての事ではなかったし、彼女も今まで通りに笑顔で送り出してくれた。
訃報が届いたのは、初日の発表を無事に終えて 翌日の準備を整えていた時の事だ。確かに、書類ケースに入れてあったまっさらの予備の紙に何故かインクの染みがついていて、不思議に思ってインク瓶の蓋を閉め直していた時だった。やや荒々しく叩かれた扉に どうぞ、と声を掛けると、入ってきたのは宿屋の台帳管理をしていた少年だった。
「速達」
簡潔にそう述べられ、差し出されたのは小さな封筒と 何も乗っていない手の平。
封筒を受け取り、思わずそのしたたかさに苦笑すると、少年は ん、ともう一度手の平を伸ばす。
「ありがとう」
そう言ってその手の平にコインを数枚握らせ、それに満足して 入ってきたときと同じくらい荒々しく部屋を出て行く少年を横目で見ながら 少しの間逡巡する。
速達だって?滞在先を知っているのは 学会関係者数名と、家で待っている妻だけではないか。
学会の事で何か問題が生じたなら、手紙など面倒な手段を取るよりも直接尋ねた方が早いはずだ。と、すると、消去法で送り主は妻であるはずなのだが、これも違う。
封筒の表に書かれた筆跡が妻のものでは ないのだ。
結局しっくりくる予想も付かずに 首を捻りながら、封を切る。中から出てきたのは封筒のサイズに折りたたまれた白い紙。その上に書き殴るように並んだその文字は、確かに予想外の事を私に伝えてきた。
妻と子供が事故に合ったという事、そしてそのどちらも 助からなかったという事。
送り主は偶然その場に居合わせたらしい妻の知人だった。連絡先は、几帳面な妻がリビングのコルクボードに貼り付けていたメモを見たという事が最後の方に言葉少なに書かれていた。
私はしばらくその手紙の内容が理解出来ずに、口元を押さえたまま立ち尽くしていた。
実際は理解をした上で、それらしい反応が出来なかったゆえに、理解出来ていないような気になったのかも知れない。それ程に私は落ち着いていた。
それからすぐに 出した荷物を再び鞄に押し込み、プロンテラに戻ってきた。学会はまだ途中だったが、そんな事はどうでもよかった。戻った家の玄関先で待っていたのは、連絡をくれた知人で、目元を赤くした彼女に連れられるままに聖堂へと向かったのだった。
そして、今へと至る。
娘の額に付いたままになっていた土を手で拭ってやりながら、私は改めて二人を見た。
台の上に静かに横たわる彼女達は、顔に目立った傷が無く、首から下を白い布で覆われているせいか ただ眠っているだけのようにも見える。ひどく現実味がない。
しかし触れた肌は明らかに人間の持つそれよりもずっと冷たく、静かだった。
牛や豚が死ぬとただの肉へと成り下がるのと同様に、彼女達もまた、人の形をした別の物体へと変質してしまったのだ。それは生きる物全てに必ず訪れる必然であり、真実だ。
終わり方はどうであれ、いずれはこうなる。遅いか 早いかの問題なのだ。
およそ万人に認められる愛しかたではなかったが、私は私なりに彼女達を愛していた。
それを彼女達がどう感じていたか、今となっては私に知る由も無い。
私は妻だった物の、髪を 頬を撫で、冷たくなった手を握り、そしてその唇に小さくキスを落とした。
彼女が 眠る前にはキスをしましょうと、そう私に言っていたからだ。
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クロック先生(クリエイター)の過去。
カリシュが家に来る7年程前、嫁と娘が事故死した時の話。
漫画で描けそうになかったから小説にしてみた。
後半はしょり過ぎたから書き直そうかと思ってたら、飛白にこんなもんでいいんじゃんと言われたのでそのまま上げちゃったんだぜ。後悔はしてないんだぜ(今のところ)
とりあえずクソ眠いから寝てこよう。
そして明日こそリクナビとか学情とかエントリー出すんだぜ。
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ミッシーは子供で、研究対象で、小さな麗しきレディー。
カリシュはバイト君で、知り合いのギルメンで、自分を慕ってくれる可愛い子。
4つか5つしか年変わらないカリシュを可愛いとか子ってのも変だが、
どうもそんな目で見てる気がする。
親が子供を見る目。
いやここは素直に先生が生徒を見る目か…?
他人に何も求めないし期待もしない。
最初から信用しないから投げっぱなし。
人と関わるのは面倒だけど、人が嫌いなわけではないと思う。
人は面白い生き物だ。生きる事は楽しい。
だがそれが一体何だと言うんだ?
全て。そう 全てが、暇潰しだ
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先生、と呼んでおくれよ。
理由?その方が燃えるからさ。